バッグ作家 石丸思(しのぶ)さん

奈良市高の原のアトリエで平面から立体をつくる

 

バッグ作家 石丸 思(しのぶ)さん

石丸思さんは、奈良市高の原でアトリエ「Cinq Sens」を主宰し、イギリス生地、フランスリボン、着物などを使って、バッグや箱などの立体的なものを制作するお仕事をされています。こちらのアトリエでは、カルトナージュ(厚紙で組み立てた箱に布や紙、革などを貼って作るヨーロッパの伝統工芸) の教室も不定期にされています。
 
現在、転換期を迎えられ、今後のアトリエのあり方やバッグ作家として活動されることを模索されている中、石丸さんの起業ストーリーをおうかがいしました。

石丸思

名称:Cinq Sens
住所:奈良県奈良市朱雀6-20-9
Tel:080-5322-8036
創業:2001年



1.事業やスペースの特徴を教えてください

アトリエは奈良市高の原にあり、一軒家の一部をお借りしています。ここで、イギリスのウィリアム・モリスやリバティの生地、フランスリボン、お客様のお着物などを使い、主にバッグやカルトナージュによる箱を作っています。バッグも箱も私にとっては「夢が入るハコ」なのです。カルトナージュは不定期に教室も開いています。

石丸思

私が提案する生地に加え、お客様自身の思い出のあるお着物や帯を活かしたいというご要望にもお応えしています。そのため、1点1点オーダーメイドでの制作になります。ご依頼をいただくお客様は「人とかぶらないもの」「私だけのもの」ということを大切にされる方が多く、オリジナル性が高いことに満足をいただいているように思います。一度購入いただいたお客様の中には「次は、この生地とこの形でお願い」と次の注文をしてくださる方もいらっしゃって、とても嬉しいことだと思っています。

お客様のご要望にお応えしようとする中てバッグの形はいくつかのパターンができてきました。持ち手を短くしたり、使うことによって弱くなりがちな部分を補強したり、いろいろ工夫して現在の形ができました。「箱」の延長上として、縫うだけではない、切る貼るの技法を使い、新しいジャンルでの制作をしています。

石丸バッグ

石丸バッグ



2.あなたの起業ストーリーを教えてください

今までの人生の中で、「これをやろう」決めた時、背中を押してくださる方が必ずおられました。導かれ、気づいたらここまで来ていたという感じです。

学生時代にご近所の方から頼まれてエレクトーンを教え始め、大学卒業後もそのまま音楽教室に就職し、30代後半で退職するまで続けました。

その後、資格を取ったこともあり、自宅でドライフラワー教室を始めたのが、最初の起業です。それまでの経験から大人のための癒しの教室を開きたくなったのです。そしてこの時、音感から色彩の世界に入りました。

石丸思

カルトナージュ(厚紙で組み立てた箱に布や紙、革などを貼って作るヨーロッパの伝統工芸) は、友達に誘われて習い始めたのがきっかけです。その後、上の子どもが大学に入学した時に、タイミングよく物件が空いたため、アトリエを構えると同時にカルトナージュも教えることになりました。

私はなぜか「教えてほしい」と言われるタイプのようで、趣味で習ったことを教える立場に回ることが多いのです。

ドライフラワーの花器を作りたくてカルトナージュを始め、ドライフラワーの生徒さんにカルトナージュも教えて欲しいと言われ、更に「カルトナージュの作品を手に持って歩きたい」と言われたのがヒントになり、バッグ作りが始まりました。

カルトナージュで作った箱に持ち手を付けてみるところからスタートし、改良を重ね、ようやく今の数パターンの形が出来上がりました。

石丸バッグ

実は私はお裁縫が全くできないのです(笑)。子どもの給食袋を作れなくて、コンプレックスがあったのかも知れません。『入れ物』を1回作りたいという願望がどこかにあったのかなと思います。


3.起業のときのご苦労をお教えください

石丸思

30代で教室を始めてからは、2人の子どもの子育てと教室運営のことで、振り返って考えている暇がないくらい忙しかったです。もう「くちゃくちゃな生活」をしてた気がしますね(笑)。

家事との両立も大変でした。台所で人参やトマトを切っている時、洗濯物を干して青空を見上げた時などにアイディアが浮かんでくることも多く、よく家事も中断しています。

そもそも家事が向いていないことに最近やっと気がつき、楽になりましたけれど(笑)。



4.これまでの成果や誇りについて教えてください

これまで、色々なご縁があり、デパートへの出展や大阪府立高校での特別非常勤講師などをさせていただきました。昨年からは、ギャラリーの方に声をかけていただき、毎年6月に銀座で個展も開いています。今年の12月には奈良でも初個展を開催します。

振り返ってみると、背中を押してくださるのは女性が多く、色々な方から声をかけていただけるのが私の特徴の一つだと思っています。

銀座での個展の様子

石丸思




5.後輩女性起業家へのメッセージをお願いします

 
思いたったら、いつかと思わず、すぐ行動することをお勧めします

石丸思

女性は、男性に比べて子どもや親の状況に左右されることが多くなりがちです。そして40歳代後半になった頃から、体力が落ちてきた事を感じるようになりました。女性なら誰でも通る道ではないかと思います。

だからこそ、「思いついたらすぐ行動すること」が大事だと思います。この先何があるか分かりません。無事な明日がいつまでもあるとは限らない、そう考えたら、やるのは「今しかない」と思うのです。

「○○ができてから」「○○が終わったら」と考えていたら、その時は永遠に来ない気がします。

50代の今になって、私は教室の先生も向いていたけれど、自分自身としてはものを作る作家やクリエイターになりたかったのかなとも思い始めました。どうしたら、自分の次の夢を実現できるか日々考えているところです。いくつになっても始められるはず。皆さんも、夢を諦めないでほしいと思っています。


印刷用PDFデータ

バッグ作家 石丸思(しのぶ)さん インタビュー記事(pdf 1MB)


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