はじめての古事記

 

 日向(宮崎県)の高千穂(たかちほ)に神倭伊波礼毘古命(かむやまといはれびこのみこと)という人物がいました。のちの神武天皇です。彼は兄と共に、天下を治めるのにふさわしい場所を求めて、東へ向かうことにしました。まずは豊国(とよこうに)の宇沙(うさ)(大分県宇佐市)に行き、そこから筑紫(つくし)(福岡県)、安芸(あき)(広島県)、吉備(きび)(岡山県)へと順調に進みます。
 そこからさらに東へ向かい、浪速(なみはや)の渡(わたり)(大阪湾の入口)を経て白肩津(しらかたのつ)に停泊していたところ、登美能那賀須泥毘古(とみのながすねびこ)が戦いを挑んできます。戦いは劣勢で、兄の五瀬命(いっせのみこと)はこのとき受けた矢が原因で命を落としてしまいます。
 そこで迂回をして、熊野から吉野、宇陀を経由して大和へ入ることにしました。途中ピンチになりながらも八咫烏(やたがらす)の案内もあって、忍坂(おしさか)(奈良県桜井市忍阪)にたどり着きました。しかしそこには尾の生えた土雲(つちぐも)という猛者(もさ)が大勢うなり声をあげて待ち構えていました。そこでたくさんの食事を土雲に振舞い油断を誘います。そして歌を合図として兵士らが一斉に斬りかかり勝利しました。
 やがて幾度とない交戦を経て、畝傍(うねび)の白橿原宮にて初代天皇として天下を治めたのでした。
(本文 万葉文化館 小倉久美子)



編集部の古事記コラム
 今回のお話に出てきた八咫烏のようなカラスの神話は中国にも残っているそうです。
 その昔、中国を堯帝(ぎょうてい)が治めていたころ太陽が10個同時に空に上がり、あまりの暑さで草木が枯れ始めたそうです。そこで弓の名手の羿(げい)という人にそのうち9個の太陽を射落とさせたところ、三つの足を持つカラスが9羽落ちてきたとのこと。
 古代中国では、月のウサギに対して、カラスは太陽の象徴とされていたそうです。
 漢の時代までに発見されていたという太陽の黒点と関係があるかもしれないようです。

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