「志蓮浄苑」開幕式にて、日中の関係者 一同で落成を祝賀(右から4人目が瀧川さん) 和の「匠(たくみ)」のイメージが強い宮大工。そのルーツは、中国にあることをご存じですか。その技術は、朝鮮を経て、仏教とともに飛鳥へ伝わりました。図面もない建物の復元、木の知識、そして「規矩術(きくじゅつ)」と呼ばれる作図法など、宮大工の手で技術は今に伝えられています。瀧川昭雄(たきがわあきお)さんもその一人。あの平城京朱雀門(すざくもん)の復元にも携わった、最高峰の宮大工です。 一方、歴史の悲劇から、技術が途絶えた地域もあります。1990年代、香港の尼僧・釈宏勲(しゃくこくん)さんは、政情不安により故郷・香港を去る人々の心をつなぎとめるため、寺院を再建しようとしました。しかし、必要な建築資料は、ばらばらになって行方がわからなくなっていたのです。 そこで、白羽の矢が立ったのが瀧川さん。すでに、UNESCO(ユネスコ)のコンサルタントとして、モンゴルで現地の大工を指導、ラマ教寺院の再建に貢献していました。言葉の壁を乗り越え、海外だからと一切手抜きはせず、正しい技術を丁寧に伝えました。 こうした実績が認められ、1993年から日中合同の再建計画がスタート、日本を代表し、瀧川さんは「古建築顧問」という立場で、寺院「志蓮浄苑(しれんじょうえん)」再建に尽力、功績から2004年には「香港ビルディング大賞」を受賞しました。現在「志蓮浄苑」は、大庭園やレストランを備え、人々の心のよりどころとして大切にされています。 奈良で守り抜かれてきた本場・中国の伝統技術が、やがて本場で「恩返し」を果たすとは、ロマンチックなお話です。奈良のお寺を眺めつつ、大陸とのつながりに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。書」を交わし、同年5月、友好都市提携の調印式が行われました。
大伽藍が今によみがえった「志蓮浄苑」
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