はじめての万葉集

 



 毎年、梅の花がほころんでくると、もう春だなあと感じます。冬の間、表面的にはなんの変化もないように見えた固い皮の下では、春への準備が着々と進んでいたのかと思うと、植物の持つ力に心を打たれます。
 古代の人々も、早春に咲く梅の生命力を愛していたようです。
 「ももしきの大宮人」とは、多くの石を敷き詰めて築いた宮殿と、そこに仕える官人たちをほめたたえた表現とみられます。この歌では、宮廷に仕える人々が梅の花を髪に挿(さ)して集うようすが詠まれています。
 植物を髪に挿すのは、単なる飾りではなく、その植物の持つ生命力を人間の身につけるという、呪術(じゅじゅつ)的な意味あいがありました。

 この歌は「野遊び」と題された四首の中の一首で、歌中に「ここ」とあるのは、他の歌から、春日野であったことがわかります。「野遊び」とは、生活する空間とそれ以外との境界で春の生命力を得るための呪術的な行事であり、春日野は、平城京に隣接した「野遊び」にふさわしい場所でした。
 一方、ウメは外来植物で、奈良時代にはまだ珍しい植物でした。「梅」という漢字の音を和風に発音したのが「ウメ」だということです。
 『万葉集』や日本最古の漢詩集である『懐風藻(かいふうそう)』には、梅の花びらを雪と見紛(みまが)うという趣向の詩歌がいくつかあります。そのことから、当時は白梅が好まれたと考えられています。
(本文 万葉文化館 井上 さやか)



片岡梅林の白梅
 今回の歌が詠まれたとされる春日野(奈良市)では、今も片岡梅林で梅を楽しむことができます。片岡梅林は、浮見堂の北側の丘の上にあり、約250本の白梅・紅梅が重要文化財の円窓亭(まるまどてい)を取り囲むように植えられています。皆さんも、ご家族やお友だちと「野遊び」に出かけてみてはいかがですか。梅の例年の開花は2月中旬頃。詳しい開花状況等は、下記で。
問 県奈良公園事務所
TEL 0742・22・0375
問 県広報広聴課 TEL 0742-27-8326 TEL 0742-22-6904
※「県民だより奈良」は県内の各家庭にお届けしています。
 市町村窓口、県の施設などにも配置しています。
※点字と声による「県民だより奈良」も発行していますので、必要な方は県広報広聴課へご連絡ください。
 県では、経費削減のために、「県民だより奈良」の裏表紙に有料広告を掲載しています。
 広告の申込・お問い合わせは、株式会社キョウエイアドインターナショナル大阪支社(TEL:06-4797-8251)まで

お問い合わせ

広報広聴課
〒 630-8501 奈良市登大路町30
報道係 TEL : 0742-27-8325
広報制作係 TEL : 0742-27-8326 / 
FAX : 0742-22-6904
デジタル広報係 TEL : 0742-27-8056
県民相談広聴係 TEL : 0742-27-8327 / 
FAX : 0742-22-8653
相談ならダイヤル TEL : 0742-27-1100

マチイロロゴ画像

スマホアプリ「マチイロ」でも電子書籍版がご覧になれます。
詳しくはこちら