奈良伝承

 



どうして墨づくりを始めようと思ったのですか?
 祖父が板金の職人だったもので、小さい頃からものづくりにあこがれていました。
 大学を出てから「奈良の伝統産業」の冊子を手にしたとき、墨づくりが紹介されているのを見て、その思いが一気に膨らみ、自社に問い合わせたのが始まりです。

墨の歴史は古いですよね。
 今から1300年前の平城京の跡からは、墨で書かれた木簡や土器が多く発見されています。そんな歴史のある墨づくりに携わっていることに魅力を感じ、やりがいにも繋がります。

墨づくりの技術はどのようにして教わりましたか?
 当時、相談役の綿谷(わたたに)一行(かずゆき)さんに教えていただきました。
 いつも「ええ墨つくれ」と教えられていたので、いつもその言葉を胸に、熱い思いで仕事をしています。墨づくりを始めて16年になります。

良い墨とは?。
 見た目が美しく、すった時に滑らかで鮮やかな墨色が出るものを言います。そのためには、原料の煤(すす)と膠(にかわ)、香料が均一に混ざっていなければいけません。
 暑い時期は原料の膠が腐りやすいので、毎年10月から4月の寒い時期に1年分の墨をつくります。また、その日の気温や湿度により手や足の感覚で力加減を変えて、均一に混ぜていきます。

(手練り)


原料を攪拌(かくはん)機(き)で混ぜて良く練った
墨玉を、より均一に混ぜるため手と足で良く練ります(足練り)


今後はどのような墨づくりを目指していますか。
 お客様に喜んでいただけるようなええ墨をつくりたいです。
 10年前に墨匠名(ぼくしょうめい)「玄(げん)堂(どう)」をいただきました。固形墨の後ろにその名前が刻まれていれば、私がつくったものですよ。


良く練った墨玉を墨の大きさに合わせて量り、木型に入れます(型入れ)

これから墨づくりを目指す人へのメッセージがあれば教えてください。
 伝統のある墨づくりを受け継ぐ熱い思いがあればできます!


木型から取り出した墨は、急激に乾燥させると割れるため、
灰の中に埋めて徐々に乾燥させた後、稲わらで編んで天井からつるし、空気乾燥させる。



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