富本憲吉(1886-1963) 一口 昭和28年(1953) 高18.0cm 径22.9cm
奈良県立美術館40選
富本憲吉作品コレクション
羊歯模様もまた富本の常用した模様の一つである。山でとったものを家の庭隅に移植し、その発育状態をじっくり観察した結果を模様化している。羊歯模様には、葉を大きく単独で扱ったものと、この飾壺のように四葉を菱形にまとめて1つの単位にした連続模様があるが、後者の使用例が圧倒的に多く、特に金銀彩では羊歯模様と表裏一体といっても過言ではない。 金銀彩の開発によって富本の陶芸は一段と華麗なものとなった。銀は時間が経つと酸化して黒く変色する欠点を持ち、また金と銀は溶解度が異なるので同時に焼き付けるのが難しく、銀泥に金泥を加え、更に白金泥を少量混入させて、金泥を加えたために生じる淡黄色を消すと同時に金銀の同時焼成に成功するのは、ようやく昭和26年頃である。赤地に金と銀を交互に用いて羊歯模様を捻りをもった帯状に一面に敷き詰めたこの壺は、そうした技法によって成功した最も初期に属する作品であり、富本の金銀彩羊歯模様の代表作の一つに数えることができよう。もと在米日本大使館に飾られていたものである。
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