籔内佐斗司館長の部屋

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       2026年の新年にあたって

                 特別展「奈良のモダン ~美術をめぐる人々」

 

 

                                 奈良県立美術館

                                 館長 籔内 佐斗司

 

 みなさまにおかれては、よき初春をお迎えのこととお慶び申し上げます。

 本年は、穏やかな日和に恵まれた正月だと思っておりましたところ、アメリカによる突然のベネズエラ攻撃と同国大統領夫妻の拘束に驚きました。国家間の戦争という形式が、今までと大きく様変わりしてきたことを感じます。また6日には鳥取、島根を中心とした強い地震の連続発生と、穏やかならぬ新年の始まりとなりました。一日も早い事態の収束と安寧を願うばかりです。

 さて、奈良県立美術館は、開館後半世紀を経過して、近年は老朽化の著しい建物と設備への対応に苦慮していましたところ、ようやく昨年から、移転と再整備に向け県庁本体とともに動き始めました。わが国を代表する国際観光都市・奈良にふさわしい県立美術館を目指して、今年から様々なことが具体化していくのではないかと大いに期待しています。

 

                              新納忠之介・鷲塚与三松合作/江場琳黌・江場琳觀追補《百済観音模刻像》(部分)1932年/2017年 龍興寺蔵

 

 そして新年第一弾となる特別展は、「奈良のモダン〜美術をめぐる人々」と題し、所蔵品を中心に、その作品に関わる美術家をはじめ研究者や文学者から、美術に関わる行政の人たちや施設、そして様々な逸話と共に重層的にご紹介し、今までにない多角的な所蔵品へのアプローチを行います。

 第一章では、東大寺転害門近くにあった旅館「對山楼」を中心にコミュニティを形成した多くの文化人について光を当てます。大正時代から昭和の戦前期にかけては、奈良の歴史や文化財に関する調査・研究も進展し、国民の間にその魅力が広く浸透するとともに、多くの文化人が集い往来するようになりました。また、こうした動向は奈良の人々をも大いに刺激し、文化人たちが互いに親睦を深め交流する場となった同館と関連する作品を中心に構成いたします。

 

 第二章では、文豪・志賀直哉の周辺に高畑地区に集った芸術家たちと、その後を引き継ぐかのように形成された東大寺・観音院の住職・上司海雲師を中心とした文化人サークルに焦点を当て、洋画や白樺派といった同時代の美術や文芸に刺激を受けて展開された多彩な文化活動や、互いに影響を与え、時には共同作業によって生み出された優れた作品を紹介します。

 對山楼と高畑に集まった文化人たちの活動を概観することで、近代の奈良と美術との関わりを検証すると同時に、独自の文化が華開いた時代に目を向けていただける機会となれば幸いです。

 

                                                    奈良ゆかりの現代作家展 出品作家 佐竹龍蔵 氏

 

 また、かなり根付いてきました本館ギャラリーにおける「奈良ゆかりの現代作家展」シリーズですが、1月17日からは佐竹龍蔵氏による 「いつかのリバーサイド」、また2月17日からは野田ジャスミン氏による「あの日のロストバゲージ」を開催いたします。詩情豊かな瑞々しい感性に溢れた作品をぜひお楽しみください。

 

 最後になりましたが、展覧会開催にご協力をいただきました関係各位に、心より御礼を申し上げます。

 文化というものは、その時代なりの言葉と知性で解釈して語り継いでいくものです。令和の今も、奈良において、このような知的空間と人々の集まりを再び持つことができるよう、奈良県立美術館はこれからも活動を続けてまいりたいと存じます。2026年の本館に、どうぞご注目ください。

 


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