不染鉄(1891-1976) 一面 昭和初期頃 絹本著色 95.6×86.3cm
奈良県立美術館40選
絵画(近代・現代)
不染鉄(本名 哲次)は一時滞在した伊豆大島や永住の地となった奈良などの実際の景色をもとにした幻想的な風景画で知られる。山間にひっそりと佇む小さな村を主題とした本作では、宗教絵画を思わせる空間に民家を配し紅葉に彩られた山村を金色に輝く浄土のように描き出している。思い出の一場面のように立ち現れる懐かしくも穏やかな情景には、身近な自然や日々の営みを慈しむ作者の理想郷的世界が投影されている。 不染鉄は東京で生まれた。浄土宗の学校で学んだ後、日本美術院研究生となる。写生旅行で訪れた伊豆大島で三年暮らし、その後京都市立絵画専門学校に入学、首席で卒業。在学中第一回帝展に《夏と秋》が初入選を果たす。以後同展に克明な細密描写による風景画などを発表するが次第に画壇を離れ、晩年は奈良で学校教育に携わりながら身の回りの事物や風景を愛情豊かに描いた。
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