土焼 鉄描銅彩曲る道模様 大皿

解説

 

大正15年(1926)、富本は住み慣れた安堵村から東京に移住する。しかし東京の工房には地下室がなく、冬季になると素地土が凍って仕事ができなかった。そのため富本はこの時期になると地方の窯場を回って各地の伝統技法を研究した。昭和4年(1929)には滋賀県の信楽に滞在している。

 民衆の生活の中に安価で美しい陶器を提供したいと考えていた富本は、早くから陶磁器の量産という課題にも取り組んでいた。信楽では、現地の職人が作った素地に自らが絵付けをする方法を試みており、本品もそうして制作した作品の一つである。

 地蔵尊をまつる小堂と麦畑の畝、一本だけ残った梨の木。崖に沿って小堂の下から左手へ大きく曲がりこむ道。安堵村の風景から創案した「曲る道」模様が勢いのある筆致でのびやかに描かれ、内側面には模様に合わせて「曲道小道」の文字が配されている。

 なお同種の作品が複数伝わっており、安堵村の風景模様や柘榴・野葡萄といった比較的速写に適した模様が使われている。 


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