奈良県立美術館 Nara Prefectural Museum of Art
「美人図(びじんず)」
井特(せいとく) (1755/56-?)
一幅 江戸時代(18-19世紀)
絹本著色 113.4×39.4cm
奈良県立美術館40選
絵画(江戸時代以前)
解説
井特は京都の祇園の絵師で、「祇園井特(ぎおんせいとく)」と呼ばれている。遊女や芸妓の姿を多く描いたほか、写実の才能を認められ、肖像画や人体解剖の記録画の制作も行った。
本図には芸妓と思われる女性が描かれている。背筋を伸ばし、足をやや開き気味にして立つ姿には逞しい生命力が現れており、顔・髪や着物の裾模様が濃彩で入念に描写されている。
「平安井特写」の款記と白文方印「字曰伯立」、朱文千鳥印「せいとく」がある。「せいとく」印に欠損が無いことから、同印に欠損が見られる享和2年(1802)秋賛「歌妓図」(本居美濃賛 京都府立総合資料館蔵)より早い時期の作と考えられる。
画上には、大津の俳諧師 木村騏道(きむらきどう)(?-1810)によると思われる下記の賛がある。
あめつちのつくりなせるうるはしき華に香にめでゝ うつりゆくさまにはことしてかたちをあやどりよそをひをかざり かならず人のまつ毛をよむのかほ鳥あり 其聲鶯のさゝ鳴に似たり二日まつ 客はむなしく 水仙華 酔中青生書