奈良県立美術館 Nara Prefectural Museum of Art
「瑞亀図(ずいきず)」
葛飾北斎(かつしかほくさい)(1760-1849)
一幅 江戸時代(18世紀)
紙本著色 35.0×49.5cm
奈良県立美術館40選
浮世絵
解説
葛飾北斎は江戸の浮世絵師。勝川春章に入門し、初め勝川春朗の号で役者絵版画等を描いたが、その後度々改号しながら没年までの長い期間にわたり、版画・版本・肉筆画に活躍した。
本図は、勢いよく湧き出る泉から姿を現した大きな亀に年配の夫婦が酒を飲ませ、それを傍らの男性が称える、長寿の喜びを描いた作品である。
「北斎宗理(ほくさいそうり)画」の款記と上朱文・下白文聯(れん)印「辰(とき)」「政(まさ)」があり、北斎が宗理号を用いた時期の作品とみなされるが、その時期は寛政7年(1795)頃から同10年(1798)夏頃までと考えられている。また、寛政9年(1797)の年記がある北斎の俳諧摺物(はいかいすりもの)「臼・萩・雀図」に本図と同様の款・印があり、本図がこの摺物と近い時期に描かれた可能性も考えられる。
画面向って左上に、北斎と交流のあった書家の稲葉華渓(いなばかけい)(?-1800)が「醴泉湧出 亀銜玉杯 福鍾有兆 寿門可開」の漢詩賛を記している。