はじめまして
山本雅美 (学芸課長)
2024年5月10日
令和6年4月1日に奈良県立美術館の学芸課長を拝命した山本雅美です。昨年、この「学芸員の部屋」で紹介があった採用試験を受験し、ご縁があって奈良県立美術館の仲間に加えていただくことになりました。また新人学芸員1名が採用され、令和6年度の奈良県立美術館は6名の学芸員で活動し、今年度の「学芸員の部屋」は6名のリレー方式でお届けする予定です。どうぞよろしくお願い致します。
籔内館長よりご案内しました「小川晴暘と飛鳥園 100年の旅」展(籔内佐斗司館長の部屋)は4月20日に無事、開幕しました(6月23日まで)。展覧会の内容については、次回以降、担当学芸員からこの「学芸員の部屋」にてご紹介します。
私からはゴールデンウィークのイベントのご報告を。5月3日(金・祝)、展覧会関連イベントとして飛鳥園のカメラマンである若松保広氏をお招きして、担当学芸員とのトークセッションを行いました。実際に使っているカメラなどを見せていただきながら、仏像撮影の具体的なライティングなどを実演してくださり、とても臨場感のある会になりました。
今後のイベントについては、当館ホームページをご覧ください。次回、5月18日(土)14時から、担当学芸員によるギャラリートークを予定しています。
さて、初めての「学芸員の部屋」の記事なので、自己紹介をさせていただきます。実は、安田前副館長(現・高知県立美術館館長)は、私が初めて勤めた美術館の上司でした。私は大学で日本美術史を学んでいましたが、博士課程に在学中の当時、原美術館学芸部のアルバイトの募集があり、現代美術を勉強してみたいと思い、応募しました。原美術館では、安田さんをはじめ学芸員のみなさんのお手伝いをしながら、現代美術について、学芸員の仕事について学ぶ日々でした。
その後、ご縁があり、東京都現代美術館の学芸員になり、12年間ほど働きました。東京都現代美術館では様々な仕事をしましたが、代表的な仕事といえば、2014年に開催した「ワンダフルワールド―こどものワクワク、いっしょにたのしもう。みる・はなす、そして発見!の美術展」になります。乳幼児から未就学児とその家族を対象とし、現代美術を体験的に楽しんでもらうという展覧会を企画し、この展覧会を通して美術鑑賞教育に興味を持つようになりました。
東京都現代美術館を退職した後は、2017年に船橋市役所(千葉県)の学芸員になりました。当時、船橋市では市立美術館の建設が進んでいて、いよいよ学芸員を入れて準備をはじめようという段階でした。ここでは初めての美術担当学芸員ということで、大変珍しがられ、皆さんにかわいがってもらいました。
しかし、残念ながら、コロナ禍がきっかけとなり、船橋市の美術館建設は中止。私の仕事もそこで終わりました。これが2021年のことです。
そして、また良縁に恵まれ、千葉県野田市にある茂木本家美術館というキッコーマン創業家の私立美術館の学芸員になりました。当時、田舎暮らしをしたいと思っていたので、家族(+猫)と一緒に野田市に引っ越し、しょうゆの香りに包まれた町でのんびり過ごしていました。しかし、子供の進学の関係などで、昨年秋に茂木本家美術館を退職。次の仕事をどうしようかと考えていた時にこちらの採用試験を知り、応募して、現在に至るということです。約20年の学芸員生活ですが、指定管理者の美術館、市役所、私立美術館とさまざまなタイプの職場を渡り歩き、今回は奈良県職員として学芸員をすることになりました。
ということで、さて、私の専門は何か?と問われるとちょっと一言では答えられないのですが(色々なことをやりすぎたので)、奈良では現代美術の研究と教育普及活動をしっかりやりたいと考えています。なので、専門は「日本現代美術史、美術批評、博物館教育」としておきます。
最後に、ここに来る直前までしていた研究をご紹介します。東京都現代美術館に就職してすぐに出会った研究テーマ、日本の1960年代末~1970年代の「もの派」という動向の中心人物である“吉田克朗”(1943~1999)という現代アーティストの展覧会が、現在、神奈川県立近代美術館(葉山館)で開催されています。2005年にアトリエの調査を始めてから約20年、今回、没後25年にして初めてアーティストにとっての回顧展になりました。アーティスト本人は亡くなっても、作品が美術館という場に遺れば、その想いは生き延びる。遺された作品を通してかつてのアーティストの想いがありありと伝わってくる展覧会です。改めて美術館の役割を考えさせられる機会になりました。私は研究者として本展に関わり、図録に論文を執筆しました。
奈良からは少し遠いですが、湘南の海に面した風光明媚な美術館です。よろしければご覧ください(7月13日からは埼玉県立近代美術館に巡回します)。
さて、次回は飛鳥園展担当の深谷学芸員です。お楽しみに。
(2024年5月10日)