奈良新聞掲載記事集

令和6年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和5年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和4年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和3年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

柿の枝変わり

「枝変わり」とは、収穫期や果実の大きさなど、その品種の持つ特性の一部が、枝や樹の単位で変化する現象を指します。変化した特性が、例えば「早く収穫できる」や「果実が大きい」、「病気に強い」など、元の品種に比べて安定して優れている場合には、新品種や新系統、選抜系などとして広まることがあります。温州みかんの極早生品種「ゆら早生」や、桃の早生品種「日川白鳳」、日本なしの「おさ二十世紀」や「ゴールド二十世紀」など、様々な果樹で枝変わりが利用されています。
 柿の場合も、枝変わりに由来する品種がいくつかあります。2018年時点で、奈良県で栽培面積の多い柿の上位5品種は「富有」、「刀根早生」、「松本早生富有」、「平核無」、「上西早生」となっています。このうち、「刀根早生」は「平核無」の枝変わり品種であり、また「松本早生富有」は「富有」の、「上西早生」は「松本早生富有」の枝変わり品種です。いずれも、元の品種に比べて収穫期が早いために有利販売が期待できることや、他の特性は元の品種と同じであり、栽培管理方法を大きく変える必要がないことなどから、本県の産地に広く普及したと考えられます。
 また近年では、「刀根早生」由来と考えられる、着色の早い枝変わり系統が県内で見いだされ、産地内に広まりつつあります。本県での「刀根早生」の収穫盛期は10月上中旬ですが、この系統はおおむね9月中に収穫を終えることができます。これまでは栽培方法の工夫などによって、「刀根早生」の収穫を早めようとしてきましたが、本系統を導入することで、栽培期間中に手間をかけずに収穫ピークを前倒しさせることができます。このように、農家の日頃の観察によって、有用な特性を持つ品種や系統が発見され、広く普及することもあります。(写真:(左)「刀根早生」由来の枝変わり系統、(右)「刀根早生」 (撮影日:2019年9月12日))

(左)「刀根早生」由来の枝変わり系統、(右)「刀根早生」

【豆知識】

「この枝や樹は枝変わりかもしれない」と思ったときに、それを確かめるにはどうすれば良いのでしょうか。例えば「収穫期が早い」という場合でも、枝の根元が虫にやられていたり、根が傷んでいたりしたために果実の色づきが早まった、ということも考えられます。そのため、枝変わりの可能性のある枝を他の樹に「接ぎ木」し、同じ特性が現れるかを確認する必要があります。
 枝変わりの可能性のある枝や樹があれば、まず冬(1~2月頃)に枝を採取し、乾燥しないように新聞紙とビニールで包んで冷蔵庫などで保管します。その後、適期(柿の場合は4月頃)に接ぎ木を行いますが、穂木と台木をきちんとあわせることや、接ぎ木部が動かないようしっかり固定すること、接ぎ木部が乾燥しないようにビニール等をしっかり巻くことなどが大切です。
 この接ぎ木は、種から育てる場合に比べて早く実をつけさせることができるため、新品種の育成にも利用されています。

令和2年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

平成31年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

平成30年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」



奈良新聞で第2日曜日に連載中の「農を楽しむ」に掲載されたものです。
(平成20年まで「みどりのミニ百科」)
※過去に掲載されたトピックスは時間が経過し、現下と異なる点もございますのでご了承下さい。