秋の味覚の代表として柿があります。奈良県は全国第二位の生産量を誇る柿の産地です。生の柿果実はジューシーで栄養豊富ですが、一手間かけて加工された柿の加工品はまた別の味わいがあります。今回は柿の加工品のいくつかについて紹介します。
まずは「干し柿」です。これは柿の皮を剥き乾燥させることにより、渋が抜けおいしさが凝縮されるものです。乾燥の程度によって水分含量50%程度のしっとり柔らかい食感の「あんぽ柿」から25~30%程度の比較的硬い食感の「枯露柿(ころがき)」などがあります。ちなみに枯露柿には白い粉がふいているものがありますが、これは柿に含まれるブドウ糖や果糖などの糖分が表面ににじみ出て結晶化したものです。
このほかに「柿チップス」や「柿ジャム」もあります。柿チップスは柿の果実を薄くスライスし乾燥させたもので、手軽に食べられるドライフルーツです。「柿ジャム」は柿の果肉を煮詰めたものです。柿は強い熱で煮詰めると渋くなることがあります。これは渋味の原因であるタンニンという成分が強い熱の作用で可溶性になり、舌で渋味を感じるようになるからです。柿ジャムの材料には「富有」などの甘柿を用いるとよいでしょう。
最後に農業研究開発センターで研究中の柿加工品について紹介します。果実を丸ごとシロップに漬け込んだ「柿のシロップ漬け」では、加熱による渋戻りの程度や果実熟度による影響、適した品種などを調査し、おいしいシロップ漬けができるよう研究中です。葉を活用した「柿葉茶」では、通常は葉を乾燥させるだけですが、当センターでは乳酸菌などを加え発酵させる新しいタイプの柿葉茶を研究しています。今までにはない味や香りが楽しめる柿葉茶に仕上げていきたいと考えています。また、果実のピューレをフリーズドライ処理することによりサクサクした食感の加工品となります。そのままお菓子として食べるだけでなく、製菓の素材としての活用も期待できることから、食感の維持方法などを研究中です。
【豆知識】柿タンニンについて
みなさんは渋抜きしていない渋柿を食べた経験があるでしょうか。食べたことのある方なら、強烈な渋味が忘れられないことでしょう。あの渋味の成分がタンニンです。
柿タンニンは渋味の成分としては嫌われ者ですが、昔から防水効果や防腐効果が知られており、和傘の笠部分に塗ったり、建築物の塗料などに利用されてきました。
近年、柿タンニンの機能性について注目されてきており、食後の血糖値の上昇を抑える効果や、新型コロナウイルスを不活性化する作用が報告されています。農業研究開発センターでは柿タンニンを効率的に抽出する方法を確立し、これら機能性について大学等と連携し研究を進めています。