奈良新聞掲載記事集

令和6年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

トウモロコシのはなし

 トウモロコシは夏場によく野菜売り場で見かける、馴染みのある作物ですが、私たちが食べているのは植物のどの部分だと思いますか。普段食べている一つ一つの粒は、それぞれが種子なのです。ただし、トウモロコシを食べる際、未成熟な状態の種子を食べる場合と、完熟した種子を食べる場合があります。私たちが未成熟な状態で食べている甘味のあるトウモロコシは、特に"スイートコーン"と呼ばれます。スイートコーンは、平均的な糖度が18度以上のものも珍しくありません。その糖度は果物で言えば、柿やブドウと同程度の値です。一方で、スイートコーンと違って、完熟した状態で種子を食べるトウモロコシには、ポップコーンを作るための品種やデンプンを生産することを目的とした品種などがあります。このように完熟した状態で収穫する品種の場合、小麦や米と同じイネ科の穀物に当たり、海外では主食の一つとして利用されることもあります。
 トウモロコシの成熟の過程では、先端から出ている糸状のヒゲが非常に重要です。そのヒゲの一本一本はめしべであり、それぞれの粒につながっています。ヒゲに花粉が付くと、受粉して粒が大きくなっていきます。つまり、すべてのヒゲにしっかりと花粉が付くことが実の詰まったトウモロコシを作るうえで大切なのです。トウモロコシは根元のめしべから受粉していくため、次第に上の方へと実が詰まっていきます。それぞれの粒が十分に膨らんだ段階になると、収穫に適した状態となります。ただし、トウモロコシの実は、外側を葉で包むように覆われていて直接外からは見えないため、先端から出ているヒゲの色などから、収穫時期を見極める必要があります。ヒゲはトウモロコシ自身の受粉にとっても、その生産者が美味しいトウモロコシを収穫するタイミングを知るうえでも重要だと言えます。

【豆知識】

 不思議な色合いのトウモロコシ、バイカラー品種について紹介します。バイカラーとは、1つのものに2色の色が付いているという意味です。よくスーパーなどで見られるトウモロコシは黄色や白色の単一色ですが、バイカラーと呼ばれるのは、黄色と白色の粒が混在しているトウモロコシです。これは、黄色の品種の親と白色の品種の親をかけ合わせてできる品種です。
 トウモロコシの粒の色は遺伝子によって決まります。黄色の粒になる遺伝子と白色の粒になる遺伝子の関係は、メンデルの遺伝法則に従うことが知られています。そのため、バイカラーの場合、一つのトウモロコシに見られる粒の色の割合は、黄色と白色が約3対1になります。良食味であることでも知られるバイカラーのトウモロコシを購入した際は、実際に粒の色の割合を調べてみると面白いかもしれません。(写真:成長途中のトウモロコシ)

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令和5年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和4年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

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平成30年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」



奈良新聞で第2日曜日に連載中の「農を楽しむ」に掲載されたものです。
(平成20年まで「みどりのミニ百科」)
※過去に掲載されたトピックスは時間が経過し、現下と異なる点もございますのでご了承下さい。