奈良新聞掲載記事集

令和5年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和4年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

アザミウマという害虫

 みなさんはアザミウマという昆虫をご存じでしょうか。まだ時期は少し早いかもしれませんが、シロツメクサの花を見かけることがあれば白い紙の上などで叩いてみてください。体長1~2mm程度の細長い小さな虫が出てきたらアザミウマです。名前の由来は諸説ありますが、明治時代に子供たちがアザミの花を叩いて「ウマ出よ、ウマ出よ」と、花の中から出てくる虫の数を競って遊んだことからと言われています。アザミウマには多くの種類があり、中には農作物へ被害を与える種類もいます。今回は、農作物へ被害を与えるアザミウマについてお話します。
 アザミウマは野菜、果樹、花など様々な農作物を餌として生活しています。口針(こうしん)と呼ばれる注射針状の口で農作物の表皮に穴をあけ、唾液を注入して中の組織を破壊し、その汁を吸います。汁を吸われた部位には様々な被害が出ます。葉であれば銀白色になったり縮れたり、花であればカスリ状の跡がついて見た目が悪くなります。果実であれば傷がついたり、奇形になります。また、農作物のウイルス病を媒介することもあります。もし家庭菜園をされていて「毎年よくわからない傷や奇形果などの症状が出てくる」とお悩みでしたら、アザミウマの被害を疑ってみるのも良いかもしれません。
 農作物をアザミウマから守る方法として、最も頻繁に用いられるのは殺虫剤散布です。しかし、アザミウマは殺虫剤がかかりにくい葉裏や新芽の中、花蕾の中に好んで生息する上に、サナギになる時に土の中に潜ることから殺虫剤を効かせにくいという特徴があります。また、最近は殺虫剤への抵抗性を発達させたアザミウマも増えています。奈良県農業研究開発センターでは、殺虫剤に頼らない方法でアザミウマを退治するために、アザミウマの天敵を活用した防除技術の開発を進めています。 

【豆知識】

 アザミウマは発育スピードが速く、繁殖力が強いため、畑の中で増加してしまうと次々と農作物に被害を与えます。そこで、家庭菜園での発生を少しでも抑える方法として、光反射シートの活用があります。
 アザミウマは、成虫が飛翔することで農作物にたどりつきます。このとき、アザミウマは上から差し込む太陽の紫外線により、自身が空を向いているか、地面を向いているかを確かめていると言われています。では、作物の下に光反射シートを設置するとどうなるでしょうか。シートで反射した太陽の紫外線が下からも届きます。すると、アザミウマは方向感覚が狂って上手く飛翔できなくなり、農作物へたどりつくのが困難になります。ただし、農作物が大きく育ち太陽光が反射シートに届かなくなると効果が薄れます。作物の下だけでなくその周辺にもシートを設置できればより高い効果が期待できます。(写真:農作物を加害するアザミウマの一種〈ヒラズハナアザミウマ〉)

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令和3年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和2年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

平成31年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

平成30年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」



奈良新聞で第2日曜日に連載中の「農を楽しむ」に掲載されたものです。
(平成20年まで「みどりのミニ百科」)
※過去に掲載されたトピックスは時間が経過し、現下と異なる点もございますのでご了承下さい。