奈良新聞掲載記事集

令和6年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和5年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和4年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和3年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和2年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

平成31年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

ジャガイモの病気

 春野菜の先頭を切ってジャガイモの植え付けが始まっています。ジャガイモは栽培が比較的容易でいろんな料理に利用できるため家庭菜園の定番になっています。しかし収穫間際に株が枯れたり、イモの表面がカサブタ状になったりすることがよくあります。標高の高い南米アンデスが原産のジャガイモは、涼しくて乾燥した場所を好みます。そのため収穫時期が梅雨と重なる日本の気候では、どうしても病気の発生が多くなるのです。
  ジャガイモは40種以上の病気にかかりますが、中でも歴史的に有名なものが疫病です。19世紀半ば、ジャガイモ疫病がアイルランドで大発生し、食糧不足となり、多くの人が北米大陸へ移住しました。その後、移民たちはアメリカの経済や政治に大きな影響を与え、その子孫からケネディ大統領が誕生し、疫病は歴史を変えた病気と言われています。現在は、当時とは社会的な背景が違いますし、防除技術も確立されているため、同じような大惨事にはなりませんが、今でも注意が必要な病気であることに変わりありません。
  また、ジャガイモの種芋は種子に比べて病気に感染しやすく、病原菌を除去することが非常に難しいものです。特に土壌病害に感染した種芋を使用すると、植え付けた畑までが汚染されてしまいます。最近の研究で、ヨーロッパと日本の疫病菌が遺伝的に近縁であることが分かっており、ヨーロッパから種芋を介して日本に侵入した可能性があります。そのため、ジャガイモは、種苗の健全性が収穫に大きく影響を及ぼす作物として国から、指定種苗に認定されており、種芋は決められた圃場で厳重な管理のもと栽培され、病害検査を実施することが義務付けられています。そして、この検査に合格した種芋のみが流通を許されているのです。このようにジャガイモの栽培では、健全な種芋を購入し、使用することがとても大切なのです。

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  じゃがいも疫病の発生状況((地独)北海道総研十勝農試 栢森氏 提供)

【豆知識】

植え付け時のポイント
 種芋の購入:病原菌に感染した種芋が病気の原因になります。種芋の箱や袋に、国の植物検疫所の病害検査に合格したことを証明する「種馬鈴しょ合格証票」のシールが貼られているものを購入し、植え付けます。
畑の場所:連作障害が発生しやすいので、ナス科野菜を3年以上栽培していない場所を選びます。ジャガイモの疫病菌はトマトにも感染するので、近接して栽培しないようにします。前作にレタスや豆類を植えると、そうか病の軽減に有効です。
土づくり:そうか病はアルカリ性土壌で発生しやすいため、土壌酸度をpH5前後と低めにします。苦土石灰の施用量は1平方メートル当たり50gまでが目安です。未熟たい肥の施用も土壌酸度を高めるため、土作りには完熟たい肥を施用します。窒素を多く施用すると株が茂りすぎるので疫病が発生しやすくなります。特に追肥のやりすぎは禁物です。

平成30年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」



奈良新聞で第2日曜日に連載中の「農を楽しむ」に掲載されたものです。
(平成20年まで「みどりのミニ百科」)
※過去に掲載されたトピックスは時間が経過し、現下と異なる点もございますのでご了承下さい。