奈良新聞掲載記事集

令和6年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和5年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

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令和3年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

植物のポリフェノール 抗ウイルス性にも注目も

 近年、食への健康志向が高まり、食品の機能性成分に関心が集まるようになっています。緑茶のカテキンやブルーベリーのアントシアニンというと、なじみがあるかもしれません。これらはすべてポリフェノールと呼ばれ、機能性研究が最もよく進められている植物の成分のひとつです。そこで今回は、ポリフェノールの種類や効果についてのお話です。
 ポリフェノールは、「たくさんの(poly)フェノール(phenol)」という意味で、フェノール基のついた化学構造をもつ成分を総称して名付けられたものです。フェノール基には有害な活性酸素を消去する働きがあるため、ポリフェノールのもつ強い抗酸化作用が機能性成分として注目されるようになったのです。さらに細かい化学構造の違いにより、抗菌作用や抗炎症作用をもつものなどもあります。そもそも植物がポリフェノールを作る理由は、それぞれが生育する環境下で紫外線などのストレスから身を守り生き抜くための生存戦略のひとつで、作られるポリフェノールも植物の種類によって様々です。ほとんどの植物がポリフェノールをもっており、自然界には8000種類以上あるといわれています。
 代表的なものをいくつかご紹介しましょう。緑茶で有名なカテキンは殺菌作用があり、風邪予防に効果的といわれています。大豆に含まれるイソフラボンは、女性ホルモンと似た化学構造をもっています。そのため、更年期症状の緩和など女性にとってうれしい効果が期待されます。また、柿に含まれるタンニンはポリフェノールの中でも特に強い抗酸化作用があるといわれています。最近では、タンパク質と結合しやすいというタンニンの性質が新型コロナウイルスの不活性化に効果があるとの研究結果が発表され、その抗ウイルス性に注目が集まっています。柿タンニンの機能性について、当センターでは、詳しい化学構造との関連を調べるなど研究を行っています。

(写真:タンニン細胞から、柿渋や奈良式柿タンニン(粉末)が作られる)

kaki_tannnin

【豆知識】柿タンニンの効能
 日本では古くから、「柿渋」というかたちで柿タンニンを様々な場面で活用してきました。未熟な果実を発酵させて作られる柿渋は、染色や防腐剤、清酒の清澄剤として使われ、生活に欠かせないものだったのです。これらの用途は、タンニンが様々な物質と結合しやすいという特長を活用したものです。現在でも、消臭効果があるとして柿渋を配合した石鹸を見かけることがあります。これはタンニンがにおいの元となるノネナールなどの物質と結合し、においを抑えてくれるためです。
 タンニンという成分自体は数多くの植物種で作られていますが、柿のタンニンの大きな特徴は、果実にタンニンを貯蔵するための特別な細胞があるということです。品種によっては、果肉中に黒い粒状のタンニン細胞が見られます。当センターでは、タンニン細胞から効率的にタンニンを抽出する「奈良式柿タンニン」の製造法を開発し、産業への利用を進めています。


令和2年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

平成31年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

平成30年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」



奈良新聞で第2日曜日に連載中の「農を楽しむ」に掲載されたものです。
(平成20年まで「みどりのミニ百科」)
※過去に掲載されたトピックスは時間が経過し、現下と異なる点もございますのでご了承下さい。