奈良新聞掲載記事集

令和6年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

農作物としてのヨモギ

 ヨモギ(カズザキヨモギ)は草地や山中、道端などで広く見られます。地下茎を強固に張る多年生の植物で、乾燥に対して強い耐性があります。成長すると高さが50〜100cmほどになります。農業の生産現場では雑草で、特に耕起をあまり行うことのない果樹園では、多く発生して被害を与えることがあります。一方、耕起や湛水に弱いので、よく耕した畑地や水を張った水田では繁殖しにくく、問題となることは少ないです。
 時には厄介な雑草のヨモギですが、その茎葉は餅やお茶、入浴剤などに使われていて、人々の健康志向の高まりとともに需要が伸びています。また近年、その繁殖力を活かして、法面緑化資材として利用されています。法面とは、道路建設や宅地造設に伴って作られる傾斜地のことです。よく根付き、繁殖力が強いヨモギは法面を覆いつくすことで、風化や浸食による崩落や落石を防ぎ、台風や地震の際に道路や住宅を守ります。これまで、法面緑化には中国や韓国など海外で採集される、安価なヨモギ種子が使われてきました。しかし、これらのヨモギ種子は在来のヨモギとは異なる近縁種であることが多く、生態系を乱す恐れがあるため、法面緑化の施工業者は、近年、在来種子の利用を要望するようになりました。
 大和高原地域では、加工需要の増大と国産種子の利用要望の高まりに対応するため、令和3年からヨモギの栽培が始まっています。また、奈良県が重点的に農業支援を行っている宇陀市内の特定農業振興ゾーンでは、耕作放棄地対策としてヨモギの導入が検討されています。しかし、農作物として研究された例は少なく、栽培技術はまだ確立されていません。大和野菜研究センターでは、茎葉と種子の収穫量を増やすための栽培試験や、収穫作業時の省力化を目指した摘採機の利用試験などを行っています。

【豆知識】

 ヨモギは古来より、食用から薬、灸のモグサまで幅広く利用されてきました。別名モチグサと呼ばれ、若葉は全体が毛に覆われており、白っぽい緑色に見えます。この若葉を使ってヨモギ餅を作ります。若葉にびっしりと生えている毛は餅のつなぎになり、もちもちとした食感を生み出します。
 さらに香りが優れており、葉にはラベンダーやローズマリーと同じ香り成分を含んでいます。ここで簡単に香りを家庭で楽しむことができるヨモギ茶の作り方を紹介します。まず、葉を丁寧に洗い、その後大きい葉はざく切りにし、日なたで2〜3日干してからフライパンを使って弱火で7分ほど乾煎りをします。最後に煎った葉を急須に入れて熱湯を注ぎ、3~4分蒸らして完成です。ヨモギ特有の香りとほのかな甘みを感じられるためおすすめです。手軽なティーバッグなども手に入るので機会があれば一度味わってみてください。(写真:摘採機によるヨモギの茎葉収穫試験の様子)

1

令和5年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和4年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和3年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和2年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

平成31年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

平成30年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」



奈良新聞で第2日曜日に連載中の「農を楽しむ」に掲載されたものです。
(平成20年まで「みどりのミニ百科」)
※過去に掲載されたトピックスは時間が経過し、現下と異なる点もございますのでご了承下さい。