一生懸命育てたお米や野菜が、一晩でメチャクチャに荒らされるのはとても腹立たしいことです。特に、イノシシが収穫前の田んぼに侵入すると、イネがなぎ倒されドロドロになってしまい、出荷できなくなってしまいます。その結果、農業をやめる人もいます。そこで今回は、イノシシの生息状況や生態、被害対策についてお話します。
北海道を除くすべての都府県で生息しています。奈良県内では、県北西部の一部市街地を除く県全域で生息が確認されています。
タケノコやイモ類などの植物質のものと、ミミズや昆虫などの動物質の両方のものを食べる雑食性の生き物です。鼻を器用に使って地面を掘り起こしながらエサを探します。また、嗅覚が鋭く、生ゴミに土をかぶせただけでは簡単に見つけられてしまいます。
メスは春から夏に4~5頭の子供を産みます。そのうち通常は約半分が生き残りますが、エサが豊富にあるなど、栄養状態がよければより多く生き残ります。子育てはメスだけで行い、成長したオスは単独またはオスのグループで生活します。警戒心が非常に強く、藪などの潜み場から出るときは必ず立ち止まり、周囲の安全を確認します。
被害対策として、農作物は柵で囲って侵入を防ぎます。最近はメッシュ柵や電気柵が主流です。メッシュ柵は破られた箇所の補修、電気柵は漏電対策など、定期的な点検が必要です。それと併せて被害を防ぐには、集落からエサや潜み場をなくすことが大切です。エサとは、栽培している農作物だけではありません。放任された果樹、収穫しないスイカなど、人から見ればいらないものでも野生動物から見ればごちそうです。稲刈り後のすき込みや、放任果樹の伐採などにより、野生動物のエサとなるものをできるだけなくしましょう。また、耕作放棄地や竹藪などの潜み場は刈り払い、集落内で休める場所をなくしましょう。野生動物にとって魅力のない集落にすることが被害対策には最も重要です。
【豆知識】
野生の鳥獣は夜に現れることが多いので夜行性の生き物だと思われがちですが、実際に夜行性なのはタヌキやアライグマ、アナグマ、ハクビシンなどの小型の獣類だけで、イノシシやシカ、サルなどの大型・中型の獣類は本来は昼行性の生き物です。田畑の近くに潜んでいるイノシシやシカは、人のことを警戒して仕方なく夜に活動しているだけなのです。そのため、人に慣れてしまうと、昼でも平気で行動するようになります。例えば、奈良公園にいる野生のシカは昼に行動していますよね。もし昼にもイノシシやシカが現れるようになれば、人に慣れてしまっているサインです。人に慣れてしまうと、農地だけでなく、住宅地にも出没するようになり、人身被害などの重大な事故につながる恐れがあります。そうなってしまう前に、エサや潜み場をなくすなどの対策を実施しましょう。