奈良新聞掲載記事集

令和5年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

水稲の直播栽培

 みなさん、お米作りはされていますか?私の仕事は農業経営の研究で、農作業の省力化について考えることがあります。また、自宅で米作りをしており、その省力化を実践しようと、昨年から水稲(すいとう)の直播栽培に挑戦しています。そこで、今回は水稲栽培で省力化が期待できる直播栽培について紹介します。
 水稲の直播栽培とは、水田に種籾を直接播く方法のことで、浅水状態の水田に播種する湛水直播と、水を入れる前の水田に播種する乾田直播があります。育苗および移植作業を行わないため、これらの資材や労力が不要となります。また、この2つの作業は、育苗箱の運搬等で足腰に負担がかかるため、これらを省略できるのは大きなメリットと言えます。
 湛水直播では、事前に種子コーティングを行います。その種類には、酸素を発生し、土中での発芽を安定させる効果のあるカルパーコーティング、鉄粉で種子を浮きにくくし、スズメに食べられるのを防ぐ鉄コーティングなどがあります。コーティングの際に必要なのがコーティングマシンです(写真)。回転するドラムの中に種籾を入れ、そこに粉末状のコーティング資材と水を供給しながらコーティングをします。この他、小型のコンクリートミキサーで代用する方もいます。
 私の場合、播種する際に肥料や農薬の散布で用いる背負式の動力散布機を使いました。ただし、この方法で水田の中央まで種籾が飛ばない場合、直播用の田植機、トラクターに装着するタイプの播種機およびドローン等が必要となります。
 失敗談としては、播種した際に種籾が密集する箇所や点在する箇所が発生してしまい、その後の株の生長にバラツキができ、収穫時にコンバインの搬送部を何度も詰まらせる結果となりました。種籾を均一に播く練習が必要です。
 このような失敗があるかもしれませんが、水稲栽培の省力化を目指して、直播栽培に挑戦してみてはいかがでしょうか!

【豆知識】

水稲の湛水直播栽培を行う上では、いくつかの注意点があります。
1.スクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)の対策
 毎年スクミリンゴガイが発生している水田で直播を行う場合、芽が出た直後に食べられるのを防止する対策が必要です。播種前に、耕うんによる貝の破砕や石灰窒素の施用、播種後は、スクミリンゴガイに登録のある殺虫剤を散布します。
2.水田の均平化 
 水田の均平化をせずに播種すると、高い箇所では土壌が露出し、除草剤の効果が得られにくく、低い箇所では水深が深くなり、苗立ちが不良となります。播種前までに、水田の高低差をなるべくなくしておくことが重要です。
3.雑草の対策
 芽が出るのが水稲と雑草で同時、もしくは雑草の方が早いため、初期の雑草対策が重要です。除草剤を使用する際は、登録内容をよく確認し、湛水直播栽培で「播種時」など初期から使用可能な除草剤を選択しましょう。(写真:種子コーティングマシン)

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奈良新聞で第2日曜日に連載中の「農を楽しむ」に掲載されたものです。
(平成20年まで「みどりのミニ百科」)
※過去に掲載されたトピックスは時間が経過し、現下と異なる点もございますのでご了承下さい。