コマツナはビタミンや鉄分、カルシウムが豊富に含まれるアブラナ科の緑黄色野菜です。クセの無い味でお浸しや炒め物など様々な料理に使われます。コマツナは元々は冬が旬の野菜ですが、生育適温は10℃から25℃程度で、積雪のない地域では周年で栽培されます。茨城県や埼玉県、福岡県、東京都など主に関東地方で多く生産されています。今回はコマツナの来歴や名前の由来、現代の私たちの生活との関わりについてお話します。
東京都江戸川区にある香取神社の境内には「小松菜産土神」や「小松菜ゆかりの里」の碑があります。コマツナは、江戸時代初期に現在の東京都江戸川区小松川付近で、同じアブラナ科であるカブを品種改良して青菜として栽培され始めたと言われています。江戸幕府が始まって100年程経った頃に、江戸幕府将軍が鷹狩りで小松川地区を訪れ、香取神社に立ち寄りました。そこで食事として出された青菜が添えられた餅のすまし汁を大変気に入り、この青菜を香取神社のある小松川地区にちなんで「小松菜」と名付けたと言われています。
江戸時代が終わってから150年経った現在では、生育適温の広さや栄養豊富な点、栽培期間が短く年に7回程作付け可能な点から、コマツナは大都市の近郊を中心に全国的に栽培されており、当時と変わらず私たちの食卓に彩りを添えています。
それに加えて、コマツナは「植害試験」にも利用されます。「植害試験」は一部の肥料やその原料を対象に行われます。方法は、窒素、リン酸、加里を25mg相当量を加えた土と、そこに試験対象物を加えた土の2種類を用意し、それぞれ鉢に入れて、1容器ごとにコマツナの種子を20粒まきます。その後、発芽率や異常症状の有無、生育、収量などを調査することで、植物対して悪影響を与えないことを確認します。このように、コマツナは肥料の品質を保ち、農作物の生産を支えるという重要な役割も果たしています。
【豆知識】
近年、肥料の価格が高騰していることが大きな問題になっています。日本は肥料原料の大半を海外より輸入しているため、海外情勢により多大な影響を受けてしまうのが原因の1つです。そのため、国内の未利用資源の利活用が検討されています。これに伴い、あまり利用されおらず、安全性に関する知見が少ない原料を使用する場合にも、安全性を確保するため、「肥料の品質の確保等に関する法律」の植害試験の対象範囲が令和3年12月に改正されました。今までは肥料製品で植害試験を行っていましたが、様々な産業由来の副産物から生産される副産肥料は一部の原料で、汚泥肥料などでは原料または肥料製品で植害試験を行うこととなりました。
これまであまり利用されていなかった資源の利用が増えるにつれて、植害試験を通して肥料の品質を保つというコマツナの役割の重要性も増していきます。(写真:収穫したコマツナ)