奈良新聞掲載記事集

令和6年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和5年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和4年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和3年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和2年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

平成31年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

平成30年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

ミカンの皮の意外な力

 リンゴと並んで日本で最もよく食べられている果物と言えばミカンです。ミカンはまもなく露地栽培品の収穫が始まって流通が本格化し、3月にかけて日本のお茶の間を彩ってくれますが、ミカンを食べる時に何気なく捨てられてしまう皮が、実は生薬として広く利用されていることはご存じでしょうか?成熟した温州ミカンあるいはマンダリンオレンジの果皮を乾燥させたものは「陳皮」(ちんぴ)と呼ばれ、多くの漢方薬等の原料として使用されています。日本ではミカンの缶詰を製造する際に出る果皮が多く利用されており、国内で陳皮として年間に使用される約3百トンのうち、半分前後が国産で賄われています。「陳」の字には「古い」という意味があり、採取後、少なくとも1年以上のものが使用され、長く保存(2~3年以上)されたものほど良品とされています。古いものほど効果が高いとされており、生薬の本場・中国では、数十年も熟成されたビンテージ陳皮が大変な高値で取引されているほどです。ミカンの爽やかな香りから想像されるように、陳皮は胃もたれや食欲不振に効果がありますが、他にも風邪による咳・痰・のどの痛みの抑制や、抗アレルギー作用といった効果もあります。また、精油成分リモネンを含み、香りが良いため、スパイスとしても広く利用されています。意外と知られていませんが、七味唐辛子によく含まれているほか、大手メーカー製のカレー粉などにも隠し味として使用されており、実は知らず知らずのうちに口にしていることの多い生薬なのです。さらに、陳皮は入浴剤としても利用されています。陳皮風呂は、冬至の柚子湯と同様、肩凝りや腰痛、肌荒れ、疲労回復に良いとされるだけでなく、血行が良くなり、湯冷めもしにくくなるといった効果があるようです。
 農業研究開発センターでは薬用植物の栽培に関する研究にも取り組んでおり、今後も随時、身近な薬用植物について紹介させて頂きます。

 

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        中国広州の生薬市場の陳皮専門店

 

【豆知識】

 陳皮は簡単に作ることができます。まず、ミカンの皮をお湯でよく洗い、表面に付着した汚れやワックスなどを洗い流しましょう。余分な水気を取ってザルなどに重ならないように並べ、天日の当たる場所もしくは風通しの良い場所でしっかりと乾燥させます。1週間ほどして、かさが2~3割程度まで減ってカラカラに乾燥したら、ミルミキサーなどで粉砕するか、そのまま乾燥剤とともに瓶などに入れて保存して下さい。漢方薬の原料としては通常1年以上経ったものが使用されますが、ご家庭で利用する分にはすぐに使用すれば良いでしょう。料理の隠し味として、うどんやそばの薬味として、お菓子や紅茶のフレーバーとしてなど、様々な場面で活用できます。入浴剤として利用する場合には、出来上がった“陳皮”を1~2握りほどネットに入れてお風呂に入れるだけ。とても簡単ですので、ぜひ一度お試し下さい。



奈良新聞で第2日曜日に連載中の「農を楽しむ」に掲載されたものです。
(平成20年まで「みどりのミニ百科」)
※過去に掲載されたトピックスは時間が経過し、現下と異なる点もございますのでご了承下さい。