「鏡のように明るく輝いて」。太安万侶は『古事記』上表文で、先を見通す“天皇の御心”をこう称えた。古代において、鏡がどれほど特別なものであったかがよくわかる。
「今と昔では明かりの意味が大きく違いました。明かりとは太陽であり火。鏡作神社の祭神・天照国照彦火明命(あまてるくにてるひこほあかりのみこと)は、この大切な“明かり”そのものなのです」と語る原正朝宮司は2011年1月に98歳を迎えられた。今も現役で祭儀を執り行う。とてもお元気だ。
太陽を模した鏡は、人が初めて手にした明かりだったといえよう。「空で照り輝いていた神がこうしてはじめて地上に降られ、国を照らされることとなったんです」。太陽のように、炎のように輝く鏡は神そのもの。当神社には神宝として三神二獣鏡が伝わる。
神鏡は縁(外区と呼ばれる)が欠けている。だが、愛知県犬山市の東之宮古墳出土の鏡がその内区と同じ図柄と判明し、全体像が明らかになった。(写真の鏡はレプリカ)