揺(ゆ)る、という優しい響きの言葉を知った。「振ってしまうと、渋みが出てしまいます」。店主の竹西多香子さんが急須をいとおしむように、そっと揺らし始める。「こうやって『揺る』ことで、お茶は美味しくなります」。
寒暖の差が激しく、霧が深い田原は、良質な茶樹が育つ土地柄。大和茶の名産地としても名高い。「竹西農園 遊茶庵」は、5代目となる大和茶農家の竹西農園が「お茶の美味しい飲み方を知ってもらいたい」と2004年にOPEN。出されるお茶はすべて自家製茶園のものを使用。無農薬有機栽培で体にも優しい。予約をすれば自家製野菜をたっぷり使ったランチをいただくこともできる。なお、竹西農園は田原最古とされる茶樹を所有する。
吹き抜けの店内に陽光が降り注ぎ、湯飲みから柔らかな湯気が立ち上る。「7、8割がた、茶葉が開いたところで1煎目をどうぞ」。馥郁とした香りと共に、かぶせ茶の豊かな甘みを味わう。ほっとして、心が緩む。
竹西さんは煎茶美風流の師範で、日本茶インストラクターでもある。お茶との上手な付き合い方を尋ねると、「お茶の淹れ方に絶対はありません。嗜好品なので、そのときの気分と体調に合わせて、淹れ分けてもらうのが一番」とにっこり。
歩き疲れたら、こちらでちょっと一休みしてはいかが? 心のこもった大和茶は、きっと貴方を癒してくれるに違いない。