蘇とは、シルクロードを経て日本に伝わったとされる古代チーズのこと。7世紀末には天香具山の南で蘇が作られていたという記録も残る。蘇は当時、『日本書紀』に登場するような貴族や高級官人たちにのみ許された超高級食料だった。蘇が持つ滋味は、貴婦人たちにとっての美容を、病人たちにとっての薬効も期待されていたようだ。
この古代チーズを現代に再現したのが、みるく工房飛鳥(西井牧場)の「飛鳥の蘇」(80g)1,000円。牧場主の西井利易さんが、特殊な製法を用い、試行錯誤の末に完成させた。さて、そのお味は?
普段私たちが口にするチーズを思い浮かべると、いい意味で期待を裏切られる。塩分のしょっぱさと乳糖のほのかな甘みが溶け合い、まるでスイーツのよう。コーヒーや紅茶にはもちろん、ワインなどのアルコールともよく合う。薄くスライスして一口頬張ると、気分はすっかり万葉貴人に。